No.1392026.8.24

石塚玲依です。現在38歳。
自分がJCAAに入会させていただいたのは2013年のこと。
そのとき25歳。
これは自分がJCAAに入会させていただいた年の忘年会のお話。
すでに多くの方で賑わっている会場に着く。
自分はどこに着席しようか迷っていた。
奥のほうにポッカリと空いたちょうど良い席を見つけた。
よかったよかったと何の気なしに着席する。
・・・なるほど。
そこは隣がすぎやまこういちさんでその向かいには湯浅譲二さんという、錚々たる方々が並ぶ席であった。
隣だったすぎやまこういちさんは初対面の自分にも気さくにお話ししてくださった。
作曲家として歩き始めたばかりの自分は聞きたいことがたくさんあった。
そのなかでも「クラシック音楽をたくさん聴くといいですよ」とおっしゃったことをよく覚えている。
しかし自分はまさしくクラシックばかり聴いてきたような人間だったこともあり、
逆にこの言葉の大事な部分に気づくには少し時間がかかった。
後日、シェーンベルクの室内交響曲第1番を初めて聴いたときだった。
その時はなんとも捉えどころのない曲で魅力を感じることができなかった。
こういうことはよくある。
そしてその曲とはしばし、または永遠のお別れ。
しかしそこで例の言葉が思い出される。
何度か。
いや「たくさん聴く」。
たくさん聴いてみた。
やがて扉の奥の暗がりに灯りがつき顔もよく見えるようになってきた。
この曲はいま自分の中で大変に興味深い曲のひとつにまでなった。
いつだって曲のほうから招き入れられるわけではない。
それでも作品と幾度も向き合う。
そしてその作家のもつ世界が少しずつ見えてくることが大変に面白い。
そう考えるとこれだけ歴史を積み重ねたクラシック音楽は終わることのない人生のエンドコンテンツだ。
これは音楽だけではなく、例えば美術館の個展なんかも。
入り口ではまだ他人。
最初は「こういう絵を描く作家なんだ」くらいなもんで、
そのどこかでこちらに少しだけ扉を開けてくれるような絵に出会う。
なんだか気になって美術館を逆走する。
あ、最初に観たこの絵もこんなに魅力的だったんだ、と気づく。
すっかり出口ではその作家の世界の虜だ。
たくさん観る。たくさんわかる。
そしてそれはいまの劇伴という仕事では大いに役に立っている。
劇伴ではさまざまな作品に出会う。
その原作者さんの見せたかったものがわかるまで向き合う。
そして他人のみでなく、自分の曲にもじっくり向き合う。
曲のほうからこうしたほうがいいよと言ってくれることが多いことに気づく。
自分の世界は、自分の世界のままであればいい。
世の中はずいぶん手際が良くなった。
気がつけば、いろいろなものが同じ顔になっていく。
自分の世界くらいは、そのままでいたいと思う。
◎石塚玲依(いしづか れい)
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石塚玲依

石塚玲依です。現在38歳。
自分がJCAAに入会させていただいたのは2013年のこと。
そのとき25歳。
これは自分がJCAAに入会させていただいた年の忘年会のお話。
すでに多くの方で賑わっている会場に着く。
自分はどこに着席しようか迷っていた。
奥のほうにポッカリと空いたちょうど良い席を見つけた。
よかったよかったと何の気なしに着席する。
・・・なるほど。
そこは隣がすぎやまこういちさんでその向かいには湯浅譲二さんという、錚々たる方々が並ぶ席であった。
隣だったすぎやまこういちさんは初対面の自分にも気さくにお話ししてくださった。
作曲家として歩き始めたばかりの自分は聞きたいことがたくさんあった。
そのなかでも「クラシック音楽をたくさん聴くといいですよ」とおっしゃったことをよく覚えている。
しかし自分はまさしくクラシックばかり聴いてきたような人間だったこともあり、
逆にこの言葉の大事な部分に気づくには少し時間がかかった。
後日、シェーンベルクの室内交響曲第1番を初めて聴いたときだった。
その時はなんとも捉えどころのない曲で魅力を感じることができなかった。
こういうことはよくある。
そしてその曲とはしばし、または永遠のお別れ。
しかしそこで例の言葉が思い出される。
何度か。
いや「たくさん聴く」。
たくさん聴いてみた。
やがて扉の奥の暗がりに灯りがつき顔もよく見えるようになってきた。
この曲はいま自分の中で大変に興味深い曲のひとつにまでなった。
いつだって曲のほうから招き入れられるわけではない。
それでも作品と幾度も向き合う。
そしてその作家のもつ世界が少しずつ見えてくることが大変に面白い。
そう考えるとこれだけ歴史を積み重ねたクラシック音楽は終わることのない人生のエンドコンテンツだ。
これは音楽だけではなく、例えば美術館の個展なんかも。
入り口ではまだ他人。
最初は「こういう絵を描く作家なんだ」くらいなもんで、
そのどこかでこちらに少しだけ扉を開けてくれるような絵に出会う。
なんだか気になって美術館を逆走する。
あ、最初に観たこの絵もこんなに魅力的だったんだ、と気づく。
すっかり出口ではその作家の世界の虜だ。
たくさん観る。たくさんわかる。
そしてそれはいまの劇伴という仕事では大いに役に立っている。
劇伴ではさまざまな作品に出会う。
その原作者さんの見せたかったものがわかるまで向き合う。
そして他人のみでなく、自分の曲にもじっくり向き合う。
曲のほうからこうしたほうがいいよと言ってくれることが多いことに気づく。
自分の世界は、自分の世界のままであればいい。
世の中はずいぶん手際が良くなった。
気がつけば、いろいろなものが同じ顔になっていく。
自分の世界くらいは、そのままでいたいと思う。
◎石塚玲依(いしづか れい)
