NO.98 2018.5.9

小堀ひとみ

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 来年還暦を迎えるというのに 全く自覚がありません。
 でも、長いこと音楽をナリワイとして生きてきたのですから、いろんな種類の仕事をしてきました。
 子育て中は、子連れでOKというお言葉に甘え、レーザーディスク用のカラオケ作りを10年ほどさせていただきました。そのおかげで、ビオラのアルト記号の読み書きに困らなくなりました。
 しかし、時を経て通信カラオケが主流となり、この仕事は終了。
 入れ替わりにきた仕事が着メロ作り。
 単音の4トラックではじまり、同時発音数に制限がなくなるまで、端末の進歩とともにフォーマットが変化するのになんとかついていったので、midiデータの扱いにはずいぶんこなれました。
 その後着メロは着うたにとってかわられ、この仕事も終了しました。

 今は、数少ない生演奏の同録で、舞台用の劇伴を作る仕事をしています。
 こう考えると、ハードや端末の移り変わりとともに、仕事の内容もどんどん変化してきたのです。
 ギャラをいただきながら、生楽器もmidiも勉強させてもらえたのは、なかなかラッキーだったと思います。
 というのは、これから作編曲業をしようという若い人は、生楽器を使ったレコーディングの経験がほぼない状態のままベテランになってしまう可能性があるからです。
 学校にオーケストラがあって楽器法を勉強してから世の中にでてくる人は別ですが、そうでない場合、かけだし作家に管や弦をたくさん書かせてくれる現場がないと、いきなり生で書けと言われたらどれだけおっかないことかと思います。
 波形編集や手弾きのエディットで音楽ファイルが作れるとなると、midiの知識もそんなにいりません。そのせいで何拍目の何の音という意識があまりないのか、若い作家さんには楽譜が苦手な人も多い。
 できあがりが素晴らしければよいのでしょうけれど、いずれ人間の演奏が必要になった時に、それでは困るのではないかと思うのです。

 楽譜は、芝居でいうところに台本のようなもの。
 これが書けないということは、字の読み書きができないのと同じです。演奏家が、演奏してほしいことを楽譜できちんと伝えてもらえず混乱する現場も多いとききます。
 JCAAにはそんな作家さんはいらっしゃらないと思いますけれど、実際のところ楽譜オンチの作家さんは「確実に」増えています。
 今や楽器の演奏経験がなくても音楽が作れる時代です。
 センスさえあれば良いものが作れるのは、大きな福音ではあるのですが、ゆくゆくは生身の人間に演奏してもらう喜びを知ってほしい、そのためには楽譜のイロハをどこかで覚えてほしいと思うのです。
 そういう生演奏を知らずにきた人たちに、自分の関わる仕事に積極的に演奏家を呼んでもらえるように、生演奏を書く体験の場を作る仕組みがあってもよいのでは、とさえ思います。
 その結果JCAAの会員が増えたら喜ばしいことではありませんか?

*楽譜にこだわるあまり、一昨年自分の作品をピアノ曲集として出版しました。
「なんでも音楽屋による30小品の詰め合わせ~The Far East~」

*出版しただけで気が抜けることしばし、このほどやる気をだしてピアノだけのライブをやることにしました。

2018年6月4日(月)19:00 Start 公園通りクラシックス
出演 小堀ひとみ 寺田正彦 田中知子
Charge ¥3000(当日) ¥2800(予約)


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