エッセイ1

  五木田岳彦

エッセイ2

最近「Recollection ? Progression」というCDを制作した。レコーディングは ニューヨークで行ったのだが、スタジオでの録音か、ホール録音にするかを最後まで 悩んだプロジェクトであった。最終的にはスタジオで録音することになったのだが、 この選択は生音の録音の場合はよく悩むことである。CDの出来あがりの音を、クラ シック的なサウンドにするか、ポップ感覚を持ったサウンドにするかが選択の大きな 鍵になるのだが、音楽の種類によってはどちらでもいける場合が難しい。好み次第 で、どちらの録音方法でもおもしろいCDになるのである。問題はこの好みが、制作 メンバーの中でも随分と違う場合が多いということである。

レコーディングにまつわる話として、以前に日本の某有名音楽プロデューサといっ しょに仕事をした時の話である。私はそのプロジェクトの作、編曲家であった。 彼はポップス系の音楽プロデューサで、レコーディングといえば、巨大なSSLなどの デジタル卓があるスタジオのコントロールルームから、ガラス越しに見えるアーティ ストに向かって、サングラスをかけたまま、あれやこれやと指示をしながら録音をす るのが常識であった。というより、それ以外の録音、特にクラシックの録音ではよく ある、ホールでのステレオ録音など、全く知らない世界であった。

アメリカでは、未だにポータブルな16ch程度のアナログ卓とマイク、それにDAT 程度の機材で、グラミー賞を取ってしまうようなレコーディングが結構あったりす る。
もちろんホールは最高の場所、マイクは厳選されたもので、卓にもいろいろな仕掛け があり、なによりもエンジニアの経験や耳が最も大切な要素である。マイクの角度や 距離、それぞれの楽器の位置や方向などを、ミリ単位で決めていくこの種類のレコー ディングは、まさに職人芸である。

某有名音楽プロデューサは、最初このようなコンパクトな機材をみて、驚いてこう 言った、「なんでこんな時代おくれの機材で録音しているんだ?」「SSLはどこにあ るんだ?」
「なんでマルチじゃないの???」「失敗しても、もう予算はないんだぞ!」
この時も、スタジオ録音か、ホール録音にするかが、最後の最後まで大きな議題と なった。
最終的には彼をなんとか説得して、ホールでのレコーディングはスタート。その出来 あがりの音が以外にも良いことに、プロデューサも大満足で、無事レコーディングは 終了。

彼はその後、マイク片手に日本で録音に向いている音楽ホールを探していたとか。

五木田岳彦
2002年2月18日


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